「自分で選んだ道なのに…」挫折した自分をゆるす

マインド

「自分で選んだ道なのに……」
 
わたしのこころは、いつも
「申し訳なさ」
「ふがいなさ」
でいっぱいだった。
 
2年前のこと、
わたしは、会社で、
新規プロジェクトにみずから志願し、
選ばれた。
 
「自分を成長させ、会社に貢献する絶好のチャンスだ!」
 
誇らしさや期待で、
胸がいっぱいだった。
 
でも、現実は、
理想どおりにはいかなかった。
リーダーを任されるも、
メンバーや上司の意見をまとめられない。
 
「自分で選んだ道だ。くいしばれ。」
 
なんとか、プロジェクトを前に進めたかった。
ほぼ毎日、深夜2~3時まで、仕事をした。
 
けれど、
がんばるほどに空回り、孤立し、
一向に前進できない仕事だけが山積した。
 
次第に、出勤が恐怖にかわった。
当時の日記には、
社内打ち合わせを
「闘い」と表現している。
 
そして、会社にいけなくなった。
メンタルをこわしたわたしは、
休職した。
 
 
自分で手を挙げ、つかんだチャンスだった。
期待してくれた上司への申し訳なさ、
 
「自分で選んだ道なのに、途中でにげた……」
 
ふがいなさだけが、こころを占めていた。
挫折が、こころの大きな重しとなった。
 
 
そんななか、
カウンセリングで、
先生からこんな言葉をいただいた。
 

自分でえらんだ道で、
うまくいかないことなんて
ザラにありますよ。
人間はそんなに強くないですよ。

だれかの期待にこたえる必要なんてないですよ。
そもそも、
他人の気持ちは他人のモノだから、
介入なんてできない。
他人でなく、自分の人生を生きるしかないんです。

世の中に「失敗」はありません。
あるのは「経験」だけ。
その経験がきっかけで、
幸せな人生を歩めれば、
それはもう失敗ではないですよね。

 
 
先生のことばは、こころに深く刺さった。
 
選んだ道でも、出来なくて、いいんだ。
にげだした自分を、ゆるしてもいいんだ。
期待にこたえる必要なんて、なかったんだ。
失敗でなく、経験と考えればいいんだ。
 
こころの澱が、すこしずつ流された気がした。
過去の自分を、ゆるしていいんだ。
「よくがんばった、本当におつかれさま」
自然と涙がこぼれてしまった。。
 
 
今に語り継がれる偉人にも、
みずから選んだ道から
逃げ出した経験があるらしい。
 
たとえば、あの有名な小説家・夏目漱石。
 
英語力を認められ、
33歳のときに、文部省支援で
英国留学した漱石。
きっと誇らしい気持ちで一杯だったにちがいない。
 
しかし、
英国の生活になじめず、
孤立し、
部屋から一歩も外に出られなくなる。
毎日部屋にひきこもり、泣いていたという。
 
そんな時、
漱石が向き合ったのが
「文学」だ。
人の接触を断ち、
現地の本を読みあさる漱石。
 
帰国後、友人から
「衰弱した精神を和らげるため小説を書いてみないか」
とすすめられ、
書いたのが
『吾輩は猫である』だ。
 
その後、
『倫敦塔』や『坊っちゃん』など
立て続けに作品を発表し、
小説家としての地位を向上させていく。
 
トラウマでもある英国留学の挫折が、
漱石の文学を花開かせることになった。
 
 
過去に「失敗」のレッテルを貼っていたのは、
わたし自身だったのかもしれない。
 
この世に
「失敗」なんて存在しない。
あるのは
「経験」だけ。
そして変えられるのは
「いまの自分」だけ。
 
わたしにできることは、
「経験から得た気づきを、
幸せな人生へ結びつける行動」だけだ。
 
これまでは、
仕事一辺倒の人間だった。
厳しい環境で成長することが、
すべてだった。
 
けれど、
病気をつうじ、
家族・健康・こころの大切さに気づいた。
仕事以外の、
たくさんの楽しいことにも触れ、
価値観が変わった。
 
過去にしばられず、
一日一日を、
たのしく、
精いっぱい生きていきたい。
 
「あの経験が、人生の転換点だった」
そう言えるよう、
日々を過ごしたい。

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